はじめまして、美容業界専門のキャリアアドバイザーをしている白石まどかです。
エステティシャンとして10年以上、大手のサロンチェーンを複数社渡り歩いてきました。
今は独立して、美容業界で働く人、これから働きたい人のキャリア相談を受けています。
相談の場で必ずといっていいほど聞かれる質問があります。
「エステティシャンって離職率が高いんですよね」というものです。
たしかに、その印象はあながち間違っていません。
ただ、「離職率が高い」とひとことで言っても、辞め方にはいくつかのパターンがあります。
そして、同じ業界、同じ会社でも、長く続けている人は確かに存在します。
この記事では、なぜエステティシャンの離職率が高いと言われるのか、その背景にある構造を整理します。
あわせて、長く働き続けている社員に共通する視点や、会社選びで振り回されないための考え方もお伝えします。
目次
離職率が高いと言われる背景にあるもの
まず、業界全体の数字から見ていきます。
感覚だけでなく、公的な統計にもその傾向は表れています。
厚生労働省のデータで見る業界全体の離職率
厚生労働省の令和5年雇用動向調査結果の概況によると、一般労働者の産業別離職率のうち「生活関連サービス業,娯楽業」は20.8%でした。
公表されている産業区分のなかで、もっとも高い水準です。
パートタイム労働者に限ると、36.9%まで上がります。
エステサロンは、この「生活関連サービス業」に含まれる業種のひとつです。
| 区分 | 離職率 |
|---|---|
| 生活関連サービス業・娯楽業(一般労働者) | 20.8% |
| 生活関連サービス業・娯楽業(パートタイム労働者) | 36.9% |
| 全産業平均(一般労働者) | 14%前後 |
出典:厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概況」
数字だけ見ると、たしかに高い水準です。
ただ、この20.8%という数字の中には、性質の違う「辞め方」が混ざっています。
数字だけでは見えない「辞め方」の違い
離職率という数字は、辞めた人数を割り算しただけの結果です。
そこには、入社1か月で辞めた人も、10年勤めて円満退職した人も、同じ「離職」として含まれています。
私は現場でも、独立してからの相談業務でも、辞め方には大きく3つのパターンがあると感じています。
このパターンを分けて考えないと、「離職率が高い、つまり誰にとっても向いていない業界」という誤解につながります。
エステティシャンが辞める3つのパターン
- 入社直後のミスマッチによる早期離職
- 数年働いた末のキャリアの壁による離職
- 待遇や人間関係など環境要因による離職
それぞれ、辞める理由もタイミングも異なります。
おおまかな傾向は、次のように整理できます。
| パターン | 離職が起こりやすい時期 | 主なきっかけ |
|---|---|---|
| パターン1:早期離職 | 入社から6か月ごろまで | 業務内容や体力面のミスマッチ |
| パターン2:キャリアの壁 | 勤続3〜7年ごろ | 昇進やキャリアパスの見えにくさ |
| パターン3:環境要因 | 時期を問わない | 残業、人間関係、評価制度への不満 |
順番に見ていきます。
パターン1:入社直後のミスマッチによる早期離職
想像していた仕事内容と、実際の業務にギャップを感じて辞めるケースです。
立ち仕事の体力的な負担、接客と技術の両立の難しさなど、働き始めて初めて実感する部分が大きく影響します。
Indeedの口コミには「予約がパンパンでインターバルなしで次のコースということはザラ」といった投稿も見られます。
これは特定の会社に限った話ではなく、業界全体でよく聞かれる声です。
入社前のイメージと現場のギャップが大きいほど、このパターンでの離職は起こりやすくなります。
研修期間の厳しさも、早期離職の引き金になりやすい要素です。
座学で覚えることが多いうえに、実技の練習は勤務時間外に行うという会社も珍しくありません。
「思っていたよりも覚えることが多く、ついていけなかった」という声は、新人研修の時期に特によく聞かれます。
パターン2:数年働いた末のキャリアの壁による離職
数年勤務して技術も接客も一人前になったあと、この先のキャリアが見えにくくなって辞めるケースです。
指名が取れるようになり収入も安定してきたころに、「この先、店長になる以外の道が見えない」と感じる人は少なくありません。
昇給や昇格の基準があいまいだったり、資格取得の支援体制が整っていなかったりすると、このパターンの離職が起こりやすくなります。
たとえば、指名の多いベテランスタッフほど、独立や講師業へ転身するケースが目立ちます。
会社の中に「次のポジション」が用意されていないと、優秀な人材ほど外に出ていってしまうという話は、業界内でもよく聞きます。
パターン3:待遇や人間関係など環境要因による離職
サービス残業や勤怠管理のあいまいさ、女性の多い職場ならではの人間関係の難しさなど、環境そのものが理由になるケースです。
指名制度がある会社では、お客様からの評価が数字として可視化されるため、精神的なプレッシャーを感じやすい側面もあります。
このパターンは、会社側の制度や職場づくりによって改善できる余地が大きい離職理由です。
現場で10年働いて感じた、辞める人と辞めない人の分かれ目
分かれ目のひとつは、最初の1年をどう乗り切るかだと思っています。
私自身、新卒で入ったサロンで、最初の3か月は毎日辞めることを考えていました。
体力的にきつく、指名も取れず、先輩の視線も気になる。
それでも続けられたのは、同期と愚痴を言い合える環境があったからです。
一方で、同じ時期に入社した同期の半数近くは、1年以内に辞めていきました。
理由を聞くと、「思っていた仕事と違った」という声が一番多かった記憶があります。
数年後、キャリアの壁にぶつかって辞めていった同僚もいます。
技術も接客も評価されていたのに、「この先、店長以外の道が見えない」と話していたのが印象的でした。
こうした現場の実感は、統計だけでは見えてきません。
だからこそ、離職率という数字と、実際に働く人の声の両方を見る必要があります。
「辞めない社員」に共通する視点、たかの友梨の事例から
3つのパターンのうち、パターン3の環境要因は、会社の取り組み次第で変化します。
実際に、同じ会社でも数年前と今とでは、働きやすさの評価が変わっているケースがあります。
在籍3〜5年の社員が語る「働きやすさ」の中身
大手エステサロンのひとつである「たかの友梨」を例に見てみます。
実際のたかの友梨で働く社員の声を読むと、在籍3〜5年で新卒入社したエステティシャンが会社を4.5の評価で振り返り、「いまのたかの友梨は働きやすいです」とコメントしています。
このコメントには「いまの」という言葉が入っています。
入社当初から今までで、環境が変わってきた実感があるからこそ出てくる表現です。
この方の個別回答では、有給消化率100%、月間残業3時間と答えています。
会社全体の平均である有給消化率41.7%、平均残業22.6時間と比べても、良い数字です。
さらに、この投稿者による項目別の評価を見ると、コミュニケーションの透明性、20代の成長環境、法令順守、社員のモラル、社員同士の相互尊重といった項目でも高い評価がついています。
数字上の待遇だけでなく、職場の空気や関係性についても前向きな評価をしている点は見逃せません。
もちろん、これは一人の投稿者の回答であり、会社全体の実態そのものではありません。
それでも、パターン3で挙げたような環境要因は、会社の取り組みや年数の経過によって変わりうるという実例として参考になります。
会社側の変化が定着率に与える影響
環境要因による離職を減らすには、会社側の制度改善が欠かせません。
有給休暇を取りやすくする、残業を減らす、評価基準を明確にする。
こうした取り組みは、すぐに数字へ反映されるわけではありません。
それでも、数年単位で口コミの傾向を追うと、改善の方向に動いているかどうかは見えてきます。
具体的には、シフトを組む担当者を増やして一人あたりの負担を減らしたり、複数人で担当を分け合う体制に変えたりといった工夫が挙げられます。
派手な改革ではなく、こうした小さな制度変更の積み重ねが、数年後の口コミの変化として表れてきます。
離職率の高さに振り回されないための考え方
ここまでの内容を踏まえると、「離職率が高い業界だから避ける」という判断は、少し単純すぎます。
大切なのは、離職率という数字の中身を分解して見ることです。
| 見るべき視点 | 具体的な確認方法 |
|---|---|
| 早期離職(パターン1)の起きやすさ | 求人票の業務内容と口コミの実態を照らし合わせる |
| キャリアの壁(パターン2)の有無 | 昇給・昇格の基準、資格取得支援の有無を確認する |
| 環境要因(パターン3)の改善傾向 | 同じ会社の口コミを複数年分さかのぼって比較する |
3つの視点をすべて満たす会社は、そう多くありません。
だからこそ、自分にとってどのパターンがもっとも避けたいリスクなのかを、あらかじめ整理しておくことをおすすめします。
資格取得やキャリア形成の支援体制を確認する
パターン2のキャリアの壁を避けるためには、資格取得を支援する体制があるかどうかが判断材料になります。
一般社団法人日本エステティック業協会(AEA)は、エステティシャンの認定資格制度を運営している業界団体です。
資格取得を後押ししている会社かどうかは、採用ページや面接で確認できます。
資格があれば、店舗スタッフから教育担当、独立開業まで、キャリアの選択肢そのものが広がります。
面接や職場見学で使える質問例
離職のパターンを頭で理解していても、実際の面接でどう質問すればいいか迷う人は多いはずです。
以下のような聞き方であれば、角を立てずに実態を確認できます。
- 「入社1年以内で辞める方は、どのくらいの割合でしょうか」
- 「有給休暇は、月に平均どのくらい取得されていますか」
- 「未経験からの育成で、資格取得のサポート制度はありますか」
- 「指名が少ない時期の給与は、どのように補填されますか」
面接官の反応も、判断材料になります。
数字で具体的に答えてくれる会社は、実態を把握し、開示する姿勢がある会社だと考えられます。
逆に、質問をはぐらかされたり、極端にあいまいな回答が続いたりする場合は、注意が必要です。
定点観測で口コミの推移を追う
会社の環境要因が改善傾向にあるかどうかは、一時点の口コミだけでは判断できません。
投稿時期の違う複数の口コミを見比べて、評価の推移を追うことが大切です。
具体的には、口コミサイトで会社名を検索し、投稿日時が新しいものから数件、古いものから数件を読み比べてみてください。
数年単位で評価が上向いているか、下がっているかは、意外とはっきり見えてきます。
美容業界全体の就業実態については、ホットペッパービューティーアカデミーの調査・研究ページでも定期的にデータが公開されています。
業界全体の動きと、個別の会社の口コミの変化をあわせて見ると、判断の精度が上がります。
まとめ
エステティシャンの離職率が高いと言われる背景には、業界構造としての離職率の高さがあります。
ただし、その中身は「早期離職」「キャリアの壁」「環境要因」という、性質の異なる3つのパターンに分けて考える必要があります。
環境要因による離職は、会社の取り組み次第で変わっていく可能性があります。
たかの友梨の事例のように、在籍年数の長い社員が「いまは働きやすい」と語るケースは、その変化を示すひとつの実例です。
離職率という数字だけで会社を判断せず、辞め方のパターンと、会社が変化しているかどうかを見る。
これが、エステ業界で後悔のないキャリア選択につながります。
離職率の高さに不安を感じて相談に来る方は多いですが、業界そのものを避ける必要はありません。
数字の中身を分解して見る視点さえ持てば、自分に合う会社を選ぶことは十分できます。


